2024/11/21 【雑誌】INTERIORS KOREA 2024年11月号

シゴト

WORKS
208

Ring on the green

建築家の自邸リノベーションプロジェクトである。
高密度な住宅地のマンションの 2 階レベルにある 90 m²のワンフロア において、
住居となり、オフィスとなり、スタジオとなり、ショールームとなる、
建築家の多様な活動を受け入れる拠点として計画した。

既存を丁寧に読み込み、「8 つの開口をもつ明るい空間」と「築 30 年のコンクリートが持つ物性」を最大限に尊重しリノベーションの計画を進めた。
8つの開口を生かすために、気積と視線の抜けを最大化するプランをスタディし、引戶によって間仕切ることもできるワンルームを採用した。
また、既存躯体 RC の存在を最大化するために、鉄のフラットバーによる造作金物を挿入し、素材感と部材メンバーにおいて対比関係を作り出した。

キッチン、ダイニング、リビング、アトリエを横断する既存躯体から吊られたフレームとして「Linkaged Ring」を計画した。
二重のフラットバーによって構成し、上下に照明器具を配置している。
スタジオ利用の際は照明バトンとして活用する。不規則で力強い既存躯体フレームと、鋭い直線の FL+2050 を通過する鉄のフレームを対比させ、組み込んだ照明によって両者を浮かび上がらせるデザインとした。

高密度な東京の住宅地に暮らす上で、近隣との距離の取り方は非常に重要なテーマである。ワンルームを取り囲む、外壁回りの一つながりの背景として、「Green Back」を計画した。
既存の出窓を利用し、植栽による 緑のオブラートを纏わせ、インナーサッシによって区画し、その内側から内壁を被せることでサッシ見付を隠し、 角丸の開口として設えた。
インナーサッシ、ブラインド、 植栽、アウターサッシという、4 重のレイヤーによって 近隣との直接的な視線の交わりを回避しつつ、直射光を制御し、断熱性能を向上させている。
中央の Linkeged Ring から派生し、Green Back によって濾過された近隣 外壁までが一つの囲われとして連続的に体感できる、ペリメーターの在り方を考えた。

マルチユーズな空間を作る上で、「住宅っぽさ」を徹底的に排除するこ とをインテリアでは試行した。
近隣住居までを一つの囲われとして捉えて最大化したワンルームは、仕事とプライベートをオーバーラップした 多様な活動の器となり、
今後、私たちの夫婦のライフステージの変化と 共に姿を変えていく。
ライフスタイルが高速で多様化する現代の中で、 建築家自らが、自邸と共に、その実践の最前線に在りたいと考えている。

HAMS and, Studio ( 伯耆原洋太 + 伯耆原智世 )

CREDIT

種別

リノベーション

構造規模

鉄筋コンクリート造

設計

HAMS and, Studio

設計担当

伯耆原洋太 + 伯耆原智世

施工

ルーヴィス

施工管理

渡邊もえ

計画面積

90m2

撮影

中村晃

所在地

東京都世田谷区

造作金物

小塚製作所

屋内植栽

GREENIAN

SERVICE