築20年、9階建てマンション、62平米、3LDK―。
どの角度から見てみても一般的といえるマンションの、ある一室の改修。
築年数もあまりたっていないため、「懐かしい」と思わせる要素もない。
デザインのヒントになるような個性も既存の間取りからはみつからない。
ただ、このマンションが佇む場所がおもしろい。
横浜市中区伊勢佐木町。
横浜に住む人ならご存知だろうが、築40年以上かと思われる雑居ビルがひしめきあい、
歩いていると様々な国籍の様々な人種にすれ違い、
いろんな匂いを感じる、
雑多で人間臭い場所だ。
この街に佇むマンションの一室である62平米は、どうあるべきなのだろうか。
その回答として、かつての2つの個室をリビングとつなげ、南側全面をリビングとし、
かつてのファミリー向けの間取りから一新、壁面と天井の躯体を露わにし、
5.5畳を仕切っていた壁を取り除くことで、無骨な街で無骨な構造の中に住むイメージを形にした。
リノベーションはある一部屋の中でのデザインにすぎないかもしれないが、一歩ひいた視点で見てみたい。
一部屋の改修から、その街でどう暮らすか、街との関わり方をデザインすることにつながるからだ。
(文:ルーヴィス・松井志磨)