築55年の団地を夫婦二人で暮らす場としてリノベーションしました。
場所は、高度経済成長期に東京郊外に建てられた88棟並ぶマンモス団地の1室。
周辺の住宅開発は進み徐々に高密化していく中、設計する上で最も考えたことは、都市生活では感じることができない、団地ならではの環境を日常の中に落とし込むことでした。
団地を取り巻く環境は、周囲に高い建物がないため、部屋の奥まで日差しが差し込み、南北に抜ける風や、周囲の植物の変化から四季を感じ取ることができます。
団地建設後55年の時間が蓄積したからこその周辺環境の豊かさがある一方で、
元々の間取りは、南側に重きを置いたベーシックな1LDKであり外部環境への意識よりも個室の充実に収斂する型でした。
リノベーションしたプランは南北の空間を均等に取り、収納を思い切って中央に置くことで、それぞれの空間に柔らかく変化をつけました。
南側は二列のキャラクターの異なるカーテンにすることにより、カーテンの動きや色合いで光と風を心地よく感じられるように。
一方北側はキッチンの天板やベンチ座面のレベルを窓枠と揃えることにより、庭の緑を感じられる設計にしました。
外部環境を取り込むことで生まれる空間のコントラストにより、その日の天気や気分に合わせ日々の暮らしのヒントになることを期待しています。
文:立川慧