クライアントは若い夫婦で、要望はこの家を明るく気持ちのいい家に変えてほしい、
そして数年後この住宅を賃貸として貸したい、ということであった。
想定された予算のなか、私たちは合理的にデザインする事を最優先した。
具体的には、コストの振分けをし、デザインに落し込む作業を行った。
まず私たちは生活の中心であるリビング・キッチン・ダイニングを
2階に移動さることで採光を確保し、かつ外部からの冷気と騒音を緩和した。
具体的には前面道路に接する開口部を塞いだ。
そして既存の天井を剥すことでより広い空間を確保したが、
キッチンのみ天井をつくり必要な設備機器や配線を隠した。
また私たちは床材を建物に対して15度ほど角度をつけて貼った。
この結果、私たちは既存ではわずかに高低差があった床面を、
床の下地をつくりなおすことなく、均一にすることに成功した。
これに対してキッチン台や壁・柱は古い要素を修復するだけにとどめた。
しかし私たちは要所要所で装飾的な要素を取り外す事と塗る事で、
より広くシンプルな空間をつくった。
そして最後にそれらの仕上げの色をわずかに変化をもたせた。
これによって新旧の素材のギャップを埋め、
どのような家具、生活雑貨でも、この空間になじむようにと目論んでいる。
浴室洗面トイレと主寝室になる1階部分は、設備機器を全て既存利用し、
クリーニングのみを行い、他のインテリア部分に関しては、ほぼ原状回復工事とし、
(文:ルーヴィス・福井信行)