Filemone
若いサービスマンとシェフが二人で始めたレストランの計画。
入り口が大きく天井の高い洞窟のようだったRCの躯体に、新しく計画するものを出来るだけ等価に馴染ませてみる。古さや新しさ、荒々しさと上品さといった対になる要素が共存する新しい全体が立ち上がることで、お店が元からそこにあったように周囲の街に溶け込んでいけたらいいなと考えた。
壁と天井はそのまま現しとして、その上には外部の共用アプローチ床のレンガタイルの色に調和するような微かなピンクの塗装を施した。またその壁には色を合わせた薄いレースのカーテンが掛かる。
このとても淡く彩度の低い色の重なりは、光の加減によって色が飛んで白く見えたり時には華やかな色を湛えたりと時間帯や天候によって室内の印象を変え、またラフな全体の雰囲気に少しだ けフォーマルな空気を与える。
穏やかにドレープがかかった繊細なカーテンの垂直性は空間の高さを強調し、また後ろの壁に残る古いサッシの存在感とテクスチャを覆い隠して、やわらかな光のみがホールに入るようになる。
入り口には大きなガラスが一枚。枠は室内側に隠されて外にはアーチ状に開いた洞窟の開口のみ がぽっかりと残り、そこから店内のあたたかくゆったりとした時間が外に流れ出る。
文:吉田昌平建築設計事務所
種別 |
リノベーション |
---|---|
構造規模 |
RC造 |
設計 | |
設計担当 |
吉田昌平 |
施工 |
ルーヴィス |
施工管理 |
重久萌 |
計画面積 |
58.9m2 |
撮影 |
高栄智史 |
所在地 |
東京都港区赤坂 |
サイン |
毎熊那々恵 |