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シゴト

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One Nuance

One Nuance 

東京の郊外にある30 代夫婦の住宅である。
耐震改修のされたマンションに50年間住み続けるための、変化に追従できる余⽩あるリノベーションを計画した。

<Nuance> とは感情や意味、色、音、表現の「微妙な差異」を指す。高度経済成長期に大量生産された既存の骨格は典型的な田の字プランによって形成され、「場」と「使われ方」が1:1 の関係にある。そこには余白や余裕が介在しない。
リモートワークをする共働きの夫婦の多様な活動を受け入れ、現代の暮らしにアップデートすべく、On / Off の間のどこかの気持ち、Active / Relax の間のどこかの気分、もしくはそのどちらでもない微妙な差異、中間領域である<Nuance> を空間構成/ 色/ 素材によって創り出すことで、自身の気持ちの機微を読み取り、今は「あそこ」で「あれ」をしたいと選び取れる家を目指した。

既存建物は、間⼝と奥⾏⼨法は典型的な⽇本のマンションのプロポーションでありながら、⾓部屋であることから⻑辺⼊りの⽞関、三⽅向の開⼝というプランの強みを持っている。強みを最⼤限活かすべく、外壁側に⼩部屋群を配置し、リビングから各⼩部屋へダイレクトにアクセスすることで、壁で区切られた廊下空間を徹底的に排除した。
典型的⽥の字プランの弱点ともいえる廊下空間を解体し、⽣活動線を明るく開放的かつ衛⽣的な場所としてリビング側に吸収させ、全体の広さ感を作り出した。また、リビングと⼩部屋がダイレクトに接することで、各部屋の⾏為や気配感としてのNuance がリビングに伝搬し、賑わいと余⽩が創出される街路・広場空間となることを試みた。

光を取り⼊れる「外⼝」と⽣活を縁取る「内⼝」の⼆重開⼝によって、連続性と広がりのあるファサードを内部空間側に創り出す。インナーファサードの多様な表情が街路を形成し、広場としてのリビングにNuance を与える。内⼝は⼩部屋の⽤途によって形を変え、また、建具( 開き⼾、カーテン、引⼾、欄間) によって表情を変えている。住宅のもつ当然の設えがインナーファサードに細かい表情を創り出す。建具の綴じ具合に寄ってリビングの明暗というNuance は決定的に変化する。⼩部屋によって受動的に関係性が決まるリビングとなる。

街路としての外部的表情をもつ内⼝の壁⾯には荒々しい左官塗装を⽤い、リビングに光をもたらす筒としての機能を持つ⼩部屋の壁には艶のあるソリッド塗装を採⽤している。また⽔回りとなる壁にはビニルクロスを採⽤している。ニュアンスカラーという統⼀されたトーンを逸脱せず、空間にNuance を与える表⽪に微細な表情を持たせることによって、⼼⾝の機微に応えることを考えた。

Nuance が伝搬し合う街路と広場によって⽣まれる、微細な変容に富む空間の中で、⽣活者はその瞬間の⼼⾝の状態に合う場所を選び取る。⽤途と部屋を1:1で区画せず、動線を開くことで余⽩を付与し、時間軸での家族の変化、ライフスタイルの変化に追従する⽥の字プランを現代版に更新する⼀端を担うと考えている。
(文:伯耆原洋太)

CREDIT

種別

リノベーション

構造規模

RC造(改修)

設計

HAMS and, Studio

設計担当

伯耆原洋太

施工

ルーヴィス

施工管理

武井空以

計画面積

80m2

撮影

中村晃

所在地

東京都

不動産

Around Architecture 佐竹雄太

テーブル製作

オフィスTAKAHATA,小塚製作所

ファブリック

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