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表参道ミナガワビレッジ

表参道ミナガワビレッジ
二度と作ることができないこの築山と建物群を残す

表参道に建つ検査済証のない建物を、4戸の長屋(事務所兼用住宅)とカフェ、フリースペース、庭からなる施設へ再生し、設計者が入居し運営を行っている。現行法への適合や断熱改修、さらに検査済証を再取得し不動産価値も向上させた。敷地内の4棟の既存建物と庭がつくる複雑で豊かな状況を一度全て引き受け、法的に必要な是正などを逆手に取りつつ、既存建物の配置からオーナーの記憶に至るまでを引き継ぎ、多人格的でこれまでの時間の蓄積から切断されない建築を目指した。

ミナガワビレッジは、表参道の真ん中にある違法建築であった。1957年、個人邸として誕生し、東京オリンピックを経て、アパートとして使われていた。増築を繰り返し、かつてのオーナーによるDIYで、大切に育てられた築庭は四季折々の緑に彩られ、表参道という都市にありながら、周囲の騒音と断絶された力強い、どこか懐かしい独特の雰囲気を醸し出していた。もうつくることのできないこの庭を残し、新築では作りえない新しいコミュニティを生み出す建築と、そのしくみづくりの提案からはじまった。

既存建築は1957年に新築後、増改築や建築基準法の変遷より、 違法、既存不適格が多い状態であった。
検査済証や図面は存在しなかったため、実測調査等を行い、 1敷地4建物から、庇の拡張や減築等によって、1敷地1建物として、 既存不適格証明を行い、違法部分を全て是正した。

既存建物を利用するA棟では外断熱工法(既存軸組の現しが可能)、新たに増築するBC棟では内断熱工法を採用し開口部をアルミ樹脂複合サッシ(専有部)・Low-E複層ガラスとすることで高い断熱性能(代表住戸でHEAT20 G2相当)を実現した。

A棟は既存基礎解体後、べた基礎を新設し曳家し直して軸組を置きなおした。既存軸組は耐震補強が必要になることを利用しC棟一体の構造とした。そうすることで1階部分は可能な限り壁をなくすことができている。B棟は独立した構造としA棟との隣接部分の納まりを良くしている。

外壁は共同住宅(1号)となると、耐火規定の既存不適格で、 既存軸組の現しが難しくなるため、長屋(4号)へ用途変更し、 耐火規定も現行法規適合として既存軸組を保存している。 耐震補強と断熱改修を行い新築同等の性能を担保した。A棟中央に設けたフリースペースは時間貸しを行いながら、それ以外の時間は各テナントに無償提供で作ってもらう仕組みだ。 違法建築の建て替えとして始まった計画だったが、法、構造、環境を 横断しながら適法化させ、合わせて増改築を行うことで、60年越しに検査済証が発行された。

ミナガワビレッジはこの先の生まれうる多様な関係を受け止めるためのプラットフォームであり、事実各戸の内装は我々の手を離れ入居者等により更新されている。
テナントの入れ替えや共用部を含む内装の更新などを経ているが、新しい出来事を受け入れる冗長性を持たせた設計とすることで、現在の生活様式に対応することができていると実感している。

【文:再生建築研究所 】

CREDIT

種別

リノベーション

構造規模

木造 地上2階

設計

再生建築研究所

施工

ルーヴィス

施工管理

荒井 良太

外構施工

株式会社マルキ

計画面積

425.96 m2

撮影

長谷川健太

所在地

東京都渋谷区神宮前

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