ナノメートルアーキテクチャー
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以下、建築家のテキストです。
いくつかの扉を開け、先へ進むこと。ヘアーサロンとは新たな自分に出会うため、未知なる扉を開いてくれる場所である。
原宿の明治通りから細い路地へ入り、少し歩くとまちの様子は一変する。喧騒からは遠ざかり、車は進入できず歩行空間である。歩みを進めると多くのヘアーサロンや小さな店舗が連続して現れる。そこからさらに一本路地を入り、外部に面した扉を開けて、階段を上がった場所が計画地である。2階建てのテナントビルの2階でワンフロアに1テナントのため、階段からエントランスは始まる。
大通りから店舗内までいくつもの扉をくぐり抜けていくような道のりを経てたどり着くことを考え、階段からサロン内まで路地を引き込んだ。レセプションを通り、振り返るとそこには大きな扉が開いている。扉を抜け、階段を3段降りると、たくさんの扉に囲まれた空間が現れる。ここは変化するための舞台・カットスペースである。
それぞれのカット面にも扉を用いた。新たな自分に向き合う、ここをスタートとして未知なる自分と対峙することを表現している。上部がアーチ上のスチール製カット面は、繊細さを求めて、成立する極限まで材を薄くした。正面から見ると存在はおぼろげであり、形の意味は薄れていく。しかし、そこにはドライヤーホルダーやミラー、ワックスや雑誌、植栽など様々なモノが溢れ、カット面としての機能が統合されている。
不思議の国のアリスのように、訪れた人々は扉をくぐり、新しい自分を見つける冒険に踏み出す。繊細なスチールフレームは、一見して扉とは感じさせないが、密やかに来る人の後押しをする、そんな空間を目指した。